ネゴシエーター(プロの交渉人)になる
その昔、『NEGOTIATOR(ネゴシエーター)』という米映画が公開されたことをあなたはご存知でしょうか?
今やアメリカの警察では、犯罪現場におけるややこしい交渉事の場面などで【交渉人】が必要不可欠な専門職となっています。
『踊る大捜査線』に続くユースケサンタマリア主演映画『交渉人』は記憶に新しいと思います。
このネゴシエーターと呼ばれるプロの交渉人たちの技の基礎となっているのは、ハーバード大学交渉学プロジェクトチームが開発した『交渉力学に基づいた理論と実践プログラム』や『Neuro Linguistic Programming(神経言語プログラミング)』などであります。
学習する前から拒絶反応を引き起こしてしまわれないようにこれからの連載は、あなたにできる限り分かりやすく、さらに実践できるレベルでお伝えしていこうと考えています。
では早速ですが、一般的に“交渉事”と聞けば「駆け引き」「だまし合い」「限られたパイの奪い合い」など、“勝つか/負けるか”的なサバイバルゲームやパワーゲームをイメージする人が多いようですが、あなたはいかがでしょうか?
“勝ち/勝ち(WIN=WIN)の原則”
ネゴシエーターは、“交渉事”を決して“勝つか/負けるか”的な勝負事と捉えて交渉に臨むことはありません。プロは必ず“勝ち/勝ち(WIN=WIN)の原則”から逸脱しません。
いや勝つことを考えるより、むしろ“絶対に負けない”ことにこだわると言ってもいいでしょう。
このネゴシエーターのスタンスについて、例えば以下の算数の問題を通してあなたに理解してもらうことにしましょう。
Aの設問です。
① 2+○=4
② 6-○=4
③ 2×○=4
④ 8÷○=4
上記○の中に入る数字はそれぞれいくつになるでしょうか?
もちろん、当てはめられる答えは2でしかありません。いやいや、決してあなたをバカにしているわけではありません。
それでは、次にBの設問にお答え下さい。
① ○+○=4
② ○+○=10
③ ○×○=18
④ ○×○=24
上記○の中に入る数字はそれぞれいくつになるでしょうか?
いかがでしたか?
最後にCの設問です。
① ○□○=10
② ○+○=○
③ ○□○=10+○
上記○の中に入る数字、□の中に+、-、×、÷を入れて下さい。
最後の設問はいかがでしたか?
出題の意図
それでは、上記出題の意図を解説していきます。
まずAについて、設問に対する答えはすでに決まっているということです。
続いてBでは、設問に対する答えのパターンが2通り以上に増えました。
そしてCについては、設問に対する答えのパターンがさらに増えたり無限であったりと、かなり創造力を働かすことになります。
これはまさしく交渉のあり方(捉え方)に置き換えることができるのです。
つまり、Aが一般レベル、Bが中級レベル、そしてCがプロの交渉に対する捉え方となります。
Aのレベルで捉えてしまえば、答えと演算記号が固定されている訳ですから、○の中に入る数字はつねには固定されてしまいます。
従いまして、○の中に入れる数字を交渉相手に用意させることができれば“勝ち”、できなければ“負け”という構図に成らざるを得ません。出てきた答えに対して納得するか、あるいは否定するかの選択になります。これが“勝つか/負けるか”のパワーゲームの構図です。そして、そもそも交渉の余地などなかったという訳です。
一般的に多くの交渉事では、交渉に臨む前に双方の答えがすでに固定されています。つまり、自身が用意している答えを押し通そうとすることばかり考えます。
本来交渉において、双方が用意している答えは交渉の時点ではまだ答えではなく材料でしかないのです。そして、その双方の材料をどのように組み合わせて新しい答えを創り出せるかが交渉なのです。
従いまして、設問BとCが真の交渉フレームであり、ブランクに何を入れていけばいいのかを双方で創造していくこと・・・【問題解決ゲーム】に意味があるのです。
ネゴシエーターは世の中に絶対正しい答えなど存在しないことを知っているのです。なぜなら、歴史がいつもそれを教えてくれるからです。
筆者情報
社名 | 株式会社 HOLOS-BRAINS(ホロス・ブレインズ) |
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代表者氏名 | 伊東 泰司 |
サイト名 | 企業研修・スキルアップセミナーのHOLOS-BRAINS |
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